一般社団法人地域生活サポート協会
独立開業支援
1.法人格の取得
これから独立開業を目指す方はまずはじめに法人格を取得する必要があります。
法人には社会福祉法人、NPO法人、株式会社などがありますが開業に当たって法人の種類は問われません。
法人の種類によって、理事会の設置、評議員会の設置、必要な資本金など、法人設立の要件が異なりますので、事業の規模に応じた法人格を選定いただくことになります。
法人の種類が決まれば必要書類を準備して法人の登記を行うことで法人格の取得が完了となります。
どのような法人格が取得しやすいのか?どのような事務手続きが必要なのか?などの疑問について当協会がアドバイスさせていただきます。
2.人員の確保
事業所を開設するためには国が定めた人員、設備及び運営に関する基準を満たす人員配置を行う必要があります。
人員の配置基準は開始しようとする事業ごとに異なっています。
配置が必要な人員には一定の実務経験や研修受講要件を満たす者が含まれており、「サービス提供責任者」、「サービス管理責任者」、「児童発達支援管理責任者」といった資格要件を満たす者の配置が必要となります。
また、開始しようとする事業ごとに最低限の職員数が定められていますのでそれらの要件を満たす人員を確保が必要です。
3.施設・事務所の確保
事業所を開設するためには国が定めた人員、設備及び運営に関する基準を満たす設備を整える必要があります。
居宅介護事業所のような訪問系のサービスや相談支援事業所については事務所を構える程度の設備で要件を満たすことができます。
生活介護や放課後等デイサービスなどの日中活動系サービスやグループホームなどの居住系サービスについては、利用者の安全確保の観点から建築基準法や消防法に基づく基準を満たす必要があります。
また、採光・換気設備が一定要件を満たしていること等が必要となります。
4.事前協議
人員と設備が整えば、管轄する福祉局へ新規事業の指定申請(本申請)をすることになります。
しかしながら、日中活動系サービスや居住系サービスの新規申請の場合、事業所の人員配置や設備など、事前に整備しておくことが必要な事項について確認・協議を行う目的で指定申請前に事前協議が必要になります。
開始しようとする事業が事前協議に該当する場合は、事前協議に必要な書類を整えたうえで福祉局に対し事前協議の予約を取ることとなります。
人員配置や設備などに不備がある場合は事前協議にて指摘されますので、それらを改善したうえで本申請の準備をすることになります。
なお、訪問系サービスや相談支援事業などの事前協議が不要な事業の場合は、事前協議なしに本申請することが可能です。
5.本申請
本申請の準備が整えば必要な書類一式を福祉局に提出します。
福祉局にて申請書の内容が審査され、不足や不備があれば申請書類の補正について指示されます。
補正があった場合は補正資料を整えて再提出することで審査が進められ、無事に審査をクリア―できれば事業所の指定を受けることとなります。
事前協議や本申請で不足や不備が見つかると何度となく補正が必要となり審査が一向に進まないという事態を招きます。
特に、設備の構造変更や消防設備のやり替えなどの指摘の場合は改修工事が必要な場合もあり、多大な費用と時間を要することとなり取り返しのつかないことにもなりかねません。
時間と費用を無駄にせず、スムーズな独立開業を目指すには用意周到な事前準備が必要となります。
6.指定書の交付と事業の開始
事業所の指定を受けると個別の事業所番号が割り当てられ、それが記載された指定書が交付されます。
これでようやく事業が開始できるようになりますので、独立開業された方は地域福祉を担う事業主として活躍していただけます。
1.利用契約
事業所の指定を受けたあとは、利用者との契約が必要になります。
利用者との契約には契約書、重要事項説明書、同意書などの書類を作成し、利用者から必要な署名や押印をいただく必要があります。
2.請求事務
利用が開始されればサービス提供の実績記録に基づき、介護給付費・訓練等給付費等の請求をすることになります。
介護給付費・訓練等給付費等の請求はサービスを提供した月の翌月10日までに行い、請求内容の審査の結果に問題がなければその翌月に事業所が指定した口座に給付費が振り込まれます。
請求内容に不備があればその請求は返戻となますので、その場合は不備を修正したうえで一月遅れでの再請求となります。
一旦は請求がとおり給付費が支払われた場合でも請求内容の誤りが判明した場合は、一度承認された請求を取り下げるとともに正しい請求データーで再請求する必要があることもあります。これを過誤請求といいます。
返戻や過誤があった場合は、給付費の入金が遅れるだけでなく、その請求内容の不備の解明に時間を要することもあり事務負担が生じます。
毎回正しく請求し、毎月滞りなく給付費が入金されるためにも請求事務は事業所運営にとって重要な事務のひとつと言えます。
3.利用料の請求および収納
給付費の請求内容が確定した時点で利用者が負担する費用を算出する必要があります。
利用者が負担する費用については利用者あてに請求書を発行するなどして通知します。
利用料については利用者指定の口座からの引き落としや事業所への振込など、特段の決まりはありませんので事業所ごとに収納の方法を選んでいただくことになります。
4.利用に係る帳票の発行
利用料の請求書以外に、利用明細書、領収証および代理受領書を発行することが事業所には義務付けられています。
利用明細書:利用したサービスの種別、時間、利用者負担額など
領収証:利用者負担額の領収証
代理受領書:事業所に支払われた介護給付費等の明細
5.経理事務
事業所を運営していく上で日々の金銭管理を確実に行っていることは、事業の透明性や正当性を担保するためにも重要です。
また、法人の決済報告書についてはその法人の決算年度ごとに作成しなければなりませんし、そのためには専門的な知識や資格が必要となります。
自社で作成できる場合は問題ないですが、決算報告書の作成については税理士事務所などへのアウトソーシングが主流です。
6.労務管理
事業所の指定を受けるためには国の定める人員基準を満たさなければなりません。
したがって、法人の代表となり事業所を運営するには職員の雇用が必須となり、結果として労務管理という業務が発生します。
労務管理は雇用保険、社会保険、労災保険などへの加入、労働時間の管理、職場の衛生管理など多岐に渡り、各種保険への加入手続きなどは労務士事務所などへのアウトソーシングが主流です。
特に、法人代表が現場で支援業務に当たっているような場合、他の職員の労務管理が疎かになり、知らず知らずのうちに労働基準法から逸脱していたり、労使間の思わぬトラブルに発展することにもなり兼ねません。
普段から労務管理についての些細な疑問を解消していくためには労働基準監督署への相談が最も確実な方法です。
7.変更管理
事業所の指定を受ける際に提出した人員配置や設備などの内容に変更が生じた場合は、その都度定められた期間内に変更届を福祉局へ提出しなければなりません。
人員を多く配置することで人員の加配加算を取りたい、利用者の受け入れる定員数を増やしたい、事業所を移転したい、サービス管理者に変更があった、など事業運営していると様々な変更管理が必要となります。
また、報酬体系の見直しや指定基準の変更といった理由により該当する事業所が一斉に変更届を出さなければならないといったケースもあります。
どのような変更の場合、どのような変更届を出さないといけないのかという情報を普段から蓄積しておくことは、指定基準から逸脱した運営を防ぐためにも重要です。
8.集団指導・実地指導・監査
指定を受けた事業所が提供しているサービス等の質の確保及び介護給付費・訓練等給付費等の請求の適正化を図ることを目的に集団指導や実地指導が実施されます。
実地指導では、利用者との契約に関わる書類、サービスの提供実績の記録、職員の勤務表、人員配置、設備要件、加算要件、各種マニュアル、社内教育記録、利用者へ提出すべき帳票類、請求事務の記録、ヒヤリハット報告書など、事業運営の様々な事項について調査されます。
実地指導中に著しい運営基準違反が確認された場合などは、実地指導を中止し直ちに監査が行われることがあります。
監査の結果、指定基準違反等が認められた場合は行政上の措置が取られ、勧告・命令・指定の取り消しといった重い処分が下されます。
指定の取り消し処分の場合は、既に支払われた介護給付費・訓練等給付費等の額の1.4倍の返還が求められ、指定を取り消された事業所については公表されることとなります。
実施指導での指導や監査の結果指定の取り消しは事業所としてのマイナス影響や社会的信用の失墜だけでなく、利用者への多大な不利益につながります。
普段の事業運営のなかで、サービスの質と適正な請求について点検しておくことは事務負担を伴いますがとても重要な作業です。
9.その他の支援業務以外の多様な業務
感染対策、物品・消耗品の購入、インターネットなどのIT管理、請求事務ソフトのバージョンアップ、防火管理台帳の整備、義務化されている社内研修の実施など事業所運営には支援業務以外の多様な業務が存在します。
このような業務負担を解消することで支援者が利用者支援に集中できることは、多くの事業所が地域福祉の担い手として存続していくうえで重要だと考えます。
一般社団法人地域生活サポート協会ではこれらの負担軽減に貢献できるよう事業運営支援や独立開業支援のご相談に応じています。